誰だって辛い(若い)ときはある [読書]
2004年の発行なので、つくづく「今さら」ではありますが、
集英社から出ている田辺聖子全集の装丁が素晴らしいのです。
装画は小倉遊亀。
田辺さんの本の装丁に関しては、自分の好みとちょっと違うものが
多いなぁと思っていましたが、この全集は華やかで田辺さんらしい。
さて、この全集には、
「私の大阪八景」「しんこ細工の猿や雉」がおさめられています。
大阪八景のほうは、少女時代。ちょうど戦中、戦後。
田辺さんは大阪の大きな写真館という
恵まれた家に生まれていますが、戦争で焼けてしまい、
戦後はかなりご苦労があったようです。
前から思っていましたが、お嬢様生活からの転落について
愚痴っぽく語るということがほとんどありません。
自己憐憫というのが、自分には甘く、うっとりするようなものでも、
他人には決して良い香りではないことを知っていられるのかもしれません。
少し驚きがあったのは「しんこ細工の猿や雉」。
作家としてデビューするまでの、事務員として勤務したり、
文学学校に通っていたころの自伝的小説、文学的自叙伝と
いっていいものです。
あの練れた性格の田辺さんでも、ずいぶん腹を立てたり、
へこんだり、くすんだり、あせったりしている。
小説の懸賞に応募するときに、こっそり年齢詐称もしている。
「できた人」田辺さんも、若いころは迷ったり、
やけになったりしたことがあったんである。
誰だって、ああでもない、こうでもないと
struggleする日々があるんである。
そう思うと、なんとなく勇気づけられるような気がする小説でした。
全集はちょっと高いですが、文庫もあります。
>誰だって、ああでもない、こうでもないと
struggleする日々があるんである。
とても、しみます。
小倉遊亀さんと、田辺さんはしっくりしますね。
全集を手にするっていいですね。作家がまるごとウチにやってきたみたいな贅沢感!
by はちゃぷ (2009-11-30 13:40)
田辺さんって、ネガティブな感情を出さない方かと思っていたので、
ちょっと新鮮でした。もっと若いころによんでおけば、よかったなぁと
思いましたが、今読んでも励まされます。
全集、すべてそろえたいんですが、お金も場所もないんですよねー。
by chicory (2009-11-30 14:41)
私、お恥ずかしながらも、まだ田辺聖子さんの著作を
読んだことがないんです・・・。
調べてみると、「ジョゼと虎と魚たち」なんかもそうなんですね?
「無芸大食」とか「お茶が熱くてのめません」とか、
ポプラ文庫のシリーズも個人的には素敵だなと思いました。
何か、読んでみますね。
by かものはし (2009-12-01 12:48)
私も、田辺さんの本を読んだのは、5年位前がはじめてなんですよー。
お名前は存じてましたが、なんとなく自分とは合わない気がしていて。
私はどちらかというと、エッセイのほうが好きです。
年齢のせいか、このごろ新刊がないのがさびしいところです。
いつまでもお元気でいてほしいものです。
by chicory (2009-12-01 14:12)
戦中戦後を経験した方って、
やっぱり人生経験が違うんですよね。
不景気と言われる昨今、顧みる価値ありますよね。
by はだけた大将 (2009-12-02 22:10)
そうですね。先が見えなくて、不景気で・・・・
すっかり夢のない時代ですが、こういう本を読むと、
励まされるような気持ちになります。
by chicory (2009-12-03 19:38)