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「世界」とはいやなものである [読書]


「世界」とはいやなものである―東アジア現代史の旅 (集英社文庫)

「世界」とはいやなものである―東アジア現代史の旅 (集英社文庫)

  • 作者: 関川 夏央
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫


関川夏央の、80年代末から03年までの、
おもに東アジアに関する原稿を一冊にしたもの。

冒頭の、「世界とはいやなものである」と題されたものは、
シドニーオリンピックについて。

柔道の篠原選手、たしか決勝で敗れて銀メダルだったと思います。
“誤審”と言われてずいぶん騒がれましたが、
記者会見では「弱いから負けたんです」と言ったとか。
それを聞いたフランス(金メダルを取った選手の国)の新聞は

この篠原のコメントをそのまま引用し、そしてそのままの意味にとった。篠原自身が「弱いから負けた」といっているじゃないかと書いた。 「世界」とは身もふたもないところなのである。身もふたもない「世界」に謙譲は通用しない。

さらに引用。
その柔道で、いちばん情けなかったのは山下監督だった。試合終了後抗議にとびだしたはいいが、何をいっているのかわからない。何もいっていないようでもある。こういう場合は、たわごとだろうが何だろうが、とにかく英語でまくしたてつづけて、かつ審判を畳の上から逃してはならないのである。「世界」とは身もふたもないのみならず、いやなところなのである。 筋のとおった議論でなくともよい。屁理屈でかまわない。多くしゃべる方、声を大きな方が得をするのは、クジラ談義を見ればわかる。

確かにねぇ。
そうなんですよねぇ。
結局、こういうことがうまくできないと生き残れないなんでしょうねぇ。
少なくとも世の中はこういう原理で動いていると認識しておかないと
やばいでしょうねぇ。
ああ、あいまいで、甘くて、目立たなくて、
失敗しても笑って許されて、コツコツやってるだけが美徳の日本。
そんな日本で地味に生きてゆきたいです、私は。

私が前にいた会社では、年俸交渉のために「プレゼンテーション」なるものが
必要で、私がいかに会社に貢献し、私独自の努力と知恵がいかに業績に結び付いたか、
あるいは業績が上がらなかった場合は、いかに外部要因が不運であったか
(要はいいことは自分のおかげ、悪いことはひとのせい)みたいなことを、
グラフやらなんやら使ってアピールせねばならない機会があって、
いやでしたねー。

そういえば、「世界とはいやなものである」って、
山本夏彦の言葉だと思ったんだけど、いいのかな、タイトルになってるけど。
タグ:関川夏央
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コメント 5

うさ

こういう着眼点での本っていうのも面白いデスネ。確かに…。日本人で「美徳」とされていることが外国人にとっては「?」になってしまう経験、英会話スクールに通ってからかなりリアルに直面しました(笑)。全て自分の世界が通用するというのは大間違いなんですよね…。世の中いろいろな考え方をする人たちがいるから…。
chicoryさんの前の会社ってすごかったんですね。そんなプレゼンのある会社って今まで聞いたことがありませんでした。きっとバリバリ働いている人たちがたくさんいらっしゃった会社なんでしょうね。私にはとても出来そうにないプレゼンです・・・。
スキン変えられたのですね。シンプルだけど、インパクトがありますね☆
by うさ (2009-10-11 20:35) 

Bacchus

こんにちは。
「美徳」という事について久々に考えた気がします。
成果主義を導入した会社で「美徳」を評価してくれる会社は
なかなか無いでしょうね(^^;
by Bacchus (2009-10-12 00:14) 

chicory

★うささん、こんにちは。
この本は、東アジアがテーマなので、
こういうことばっかり書いてあるわけでもないですが、一気読みしました。
今は、自分の成果をプレゼンする会社はけっこう多いんじゃないかと
思いますけど、どうなんでしょうね。そんなに珍しくないと思いますよ。
成果物について、持ち上げるのはあまり抵抗なくできますが、
自分を自分で持ち上げるのはなんか・・・ちょっと・・・って感じでした。
スキンの件、ありがとうございます。すぐまた変えちゃうと思うんですが、スウェーデンみたいな青×黄の組み合わせ、けっこう好きなんです。

★Bacchusさん、こんにちは。
成果主義って、どうなんでしょうねぇ。
確かに合理的だとは思いますが、それにかける時間と手間や、自分の将来像の見え方などを考えると・・・結局、さんざん馬鹿にされてた年功序列のほうがよいような気がしてます。
by chicory (2009-10-12 01:43) 

ユピテル

はじめまして。

山本夏彦翁はこう言っています。

「サギをカラスと言いくるめるのが健康な国家であり個人である。
すなわち健康というものはイヤなものなのである。」

関川氏はこれをもじったのではないでしょうか。
by ユピテル (2009-10-12 23:54) 

chicory

はじめまして。

山本夏彦は、いやなものがいろいろある人で、
確か「健康」以外に「世界」にも言及してたように
思うんですが。
ちょっと引用元を示せなくってすみません。
by chicory (2009-10-13 17:59) 

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