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私に似た女がいる:源氏物語 [読書]

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春です。桜です。
(中央の桜にピントが来ていないことは、味だと思っていただけると・・・)

桜にはあまり関係ありませんが、
昨日は久しぶりに大きな予定がなく、大きな書店にぶらりと
出かけてみたら。。。

円地文子の「なまみこ物語」と「源氏物語私見」が
講談社文芸文庫で一冊になっていたんですね。
どちらも名作中の名作。さっそく買って「源氏物語私見」から読みました。

作者が「源氏物語」を現代語訳したあとの随想で1974年の作。
今では源氏物語関連のエッセイは数限りなくありますが(特に去年は多かった)、
六条御息所と藤壺など源氏をめぐる女性たちや、光源氏の性格など、
それらのものの見方の根幹となっているような気がします。

六条御息所というと、嫉妬深い年上の女という面だけクローズアップされがちな
ところがありますが、彼女の教養の高さ、趣味の良さとともに、
藤壺と並ぶ、源氏が見上げるべき高貴な二人の女性という見方は
今でも新鮮だと思います。この二人はその身分の高さとともに、
源氏の求愛をふりきって去って行ったことも共通します。
藤壺の代わりとして源氏が求めたのが紫の上、
六条御息所の代わりが明石の上・・・確かにそうかもしれません。
さらに、六条御息所の経済的な自立にも目を配らせているのはさすがです。

今回、読み直して、印象的だったのは、桐壺の更衣。
桐壺帝との別れにあたって、彼女が残すのは帝への哀惜。
一言も残していく愛児、光源氏に触れていないというところです。
ただ愛されるだけの気の毒な人ではなく、更衣も強く帝を愛していた
強さのある人だったと言っています。

ほかの古典と比べて、特にあの平家物語と比べても、
源氏物語の女性たちは際立って輪郭がはっきりしていますよね。
それぞれに個性があり、リアリティがあります。
こんなに女性たちがしっかり描かれている古典はほかにないように思います。
だからこそ、自分は源氏に出てくる女性の誰に似ているとか、誰が好きか、嫌いか、
なんていうことが語れるのだと思います。

自分に似た誰かがいるようにも思うし、
反対にどの人物にも自分に似たところがあるような気もします。
やっぱり、奥が深いのだよなぁ、源氏は。

なまみこ物語・源氏物語私見 (講談社文芸文庫)

なまみこ物語・源氏物語私見 (講談社文芸文庫)

  • 作者: 円地 文子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 文庫


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コメント 4

tanuki

こんにちは~(^^)
今、まさに桜が各地で見頃になっていますね♪

「源氏物語私見」、私も円地さん訳の源氏を全巻読んだあとに買いました。ずっと実家に置きっぱなしだったので内容をほとんど忘れかけてまして・・・(恥)また読み返さなくちゃ。。
あの物語の主人公は、源氏というより、周りの女性たちですよね。
どの女性たちも個性豊かに描かれていて、感情移入してしまいます。

六条御息所は、若い頃に読んだ時は「この人、こわっっ」というイメージしかなかったけど、今の年になって読み返すと、この人の気持ちがすごくわかるな~と思ったりします(笑)
桐壺の更衣については、私もそこまで注意深く読んでいませんでした。
母である前に女である、ということが強調されているのがわかりますね。
だからこそ、更衣は周囲のどんな意地悪にも耐えられたんでしょうね。

この物語は、やはり一生かけて何度も読み続けるべきだと思いました。(^^)
by tanuki (2009-04-06 12:18) 

hawaiian

こんばんは!!
去年は京都文化博物館の「源氏物語千年紀展」なんかに出かけて行ったり、そこで聞いた講演の影響を受けて(無謀にも)「原典をめざして」なんぞ買って読んだりしてました。
今は余裕がないんですが、「源氏物語私見」 時間ができたときに読んでみますね。
by hawaiian (2009-04-06 22:09) 

kosuzume

はじめまして。ご訪問ありがとうございました。
高校で古典に挫折してから、憧れながらも手に取れないでいる日本の古典。勇気出してみようかな...という気持ちに一歩踏み出そうと図書館で探してみたら、いろんな訳者の作品があって選べずに挫折。。憧れの書の座に戻ってしまいました。
by kosuzume (2009-04-07 08:36) 

chicory

☆tanukiさん、こんにちは。
私も最初に読んだ現代語訳は円地文子でした(高校生のとき、うちの学校でブームだったので)。
源氏あっての女君たちではあると思いますが、古典文学で女性像がきちんと描かれているのは世界的にも珍しいような気がします。
六条御息所に対する卓見は、読んでいても気持ちが良いですよね。どうしても、能の「葵上」の妄執の女というイメージが強いので、もともと持っている教養の高さや趣味の良さという、bon chic bon gout なところが忘れられている気がするんですよね。
源氏って、また年をとってから、読んでも感想が違ってきそうで、面白いですよね♪

☆hawaiianさん、こんにちは。
おおー、原典とはスゴイですね。
私は谷崎訳ですら四苦八苦しましたー。
それに比べて「源氏物語私見」は一瞬で読めますので、ぜひw

☆kosuzumeさん、こんにちは。
こちらこそ、ご訪問ありがとうございます。
確かに円地文子、谷崎、与謝野晶子、田辺聖子、橋本治といろいろありますよね。
源氏を題材にしたエッセイなどもたくさんあるので、そういうものだと気軽に読めるかもしれませんよー。
by chicory (2009-04-07 19:19) 

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