ボン書店の幻! [読書]
ボン書店の店主、鳥羽茂という無名の人を追った本。
数年で消えた出版社で、出版社をたたんだあと、
どことも知らないところで亡くなったらしいという噂しか
残っていないのがさびしい。
途中で戦争をはさんでいるし、鳥羽茂の消息をたどるのは容易ではありません。
しかし、まったくもってお金にならない「書店」(一人っきりの
出版社?)に精魂を傾けた人の行方を追うこの本がこんなに胸に迫るとは。
特に文庫版で追加された章の最後の何行かには、涙させられました。
ボン書店は、1930年代(昭和初期)に実在した
小さな小さな小さな出版社で、モダニズムの詩を主に出版していたそうです。
その美しい装丁、造本でも有名だったそうですが、なにせ零細出版社。
「彗星のように」消えてしまったとか。
いやぁ、今だって儲かりませんよね。
モダニズムの詩の出版。
しかし!ボン書店の本が、すばらしくかっこいいんですよ。
「ボン書店の幻」の表紙にもなってますが、
「生キタ詩人叢書」なんてハッとするようなデザインです。
ほかにもマダム・ブランシュ、
レスプリ・ヌーボー(のちに詩学と改題)という詩の雑誌や
小さな詩集を出していますが、いずれもシック。
そのかっこよさは驚嘆ものです。
北園克衛や西脇順三郎、春山行夫の名前も見え隠れ。
知性と教養が桁違いに増したユトレヒトという感じです。
著者の内堀宏さんは古書店「石神井書林」店主。
目録販売だけだそうですが(私も一度だけ見たことがあります)、
その目録の充実ぶりは有名です。
鳥羽茂の「アマチュア」ぶりに共通するものを持っているのかもしれません。
いや、今年のベストになりそうな本でした(発行は古いですが)。
先日読んだのに、時間がなくてコメントとniceを残せませんでした。いまさらですが…。
やっぱり…感慨深いものがありますよね。今読むべき本が山積みされているので、それが終わったら(終わるだろうか…)ぜひ手にとってみたい本です。
by うさ (2010-05-02 01:36)
以前、NHKの「週刊ブックレビュー」でも取り上げられたそうです。
こうやって、あまり報われず、死んでいった出版人ってたくさんいたんだろうなぁと思います。
by chicory (2010-05-02 20:20)