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「私の食物誌」 [読書]


私の食物誌 (中公文庫)

私の食物誌 (中公文庫)

  • 作者: 吉田 健一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 文庫


食べ物について書かれた文章は、
あまりあからさまでも品がないし、かといっておとなしくするとぼやけるし、
けっこう難しいものだと思います。

吉田健一の「私の植物誌」は、
彼の言うところの関西の料理の美点、「淡味」があります。

作者は、吉田茂の孫で、大久保利通のひ孫、
麻生首相は甥にあたります。
明治生まれですが、ケンブリッジに留学。
この人のスコットランド紀行文も読んだことがありますが、
やる気がなくて(笑)、面白かったです。

子供のころからずっといいもの食べてきたんだろうなぁ。

この本では、長浜の鴨、近江の鮒鮨、関西のうどん、
大阪の雀鮨、かやくご飯などについて語られています。
作者は東京生まれだと思いますが、
大阪の小料理屋や食堂については「東京にそういう店はもうない」と懐かしんでいます。
「かやく飯と粕汁と煮締めで東京の天ぷらそば位の値段で食事をするという贅沢も今の東京では考えられないことである」とも。もっとも72年初版の本なので、まだ大阪にそういう店が残っているかどうか・・・。

少し驚いたのがパンについて。
作者によると「戦争が始まる頃までは確かに東京でも横浜でもうまいパンがあり、どこからかうまいバタが送られて来ていたが、それが戦後はどうもアメリカさんの影響で、或いは日本を占領しに来た種類のアメリカ人の好みのせいでパンはただ砂糖を入れて焼いて真っ白で甘いものならいいことになり、バタは単に脂を補給する方法になった」
ほー。戦前にもおいしいパンはあったんだ。
しかし、この本からだいぶ時間はたちましたが、スーパーで大量に売られている食パンは
年々やわらかく白くなり、状況は悪化しているように思います。
(個人的には、食パンは白飯を目指しているような気がしていて、
それならご飯をたべればいいんじゃないかと・・・)
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コメント 7

TaekoLovesParis

戦前にもおいしいパンはあったんですよ。戦争で全部なくなったと祖母から
ききました。白い食パンにバタとハムのおいしいハムサンドイッチはティールームで食べることができたそうです。関口フランスパンも戦前からあって、銀座キムラヤのあんぱんは明治時代からあったそうです。
たしかにスーパーの食パンは、どんどん白くやわらかになってますね。
by TaekoLovesParis (2009-08-24 01:09) 

ミホ

食パンの白飯化説に思わず笑ってしまいました(笑)。
個人的にはバリバリしたバケットも好きですが、あの腰のない(?)、日本独特のパンが結構好きだったりします(笑)。日本に帰ってきたーって感じがします。
吉田健一さんのスコットランド紀行、ちょっと気になります。
by ミホ (2009-08-24 11:25) 

snorita

やる気がない紀行文、どんなんだろう??
私も、最近のパン、おいしいのを発見するのに苦労しています。
by snorita (2009-08-24 15:00) 

keisuke

いつも自家製全粒粉パン食べているので、たまに白い食パンを食べるとなんだかスポンジを食べているような感じがします。
by keisuke (2009-08-25 05:57) 

chicory

★TaekoLovesParisさん、こんにちは。
普及率は低くても、意外に戦前のほうがおいしいパンがあったのかもしれませんね。銀座木村屋の場合、酒種発酵であんこ入りというのは、パンというより菓子パンだと思いますが。

★ミホさん、こんにちは。
フランスでもバゲットやパンドカパーニュより、日本でいうところの食パンが最近人気があるそうなので、柔らかいのが好まれてるのかもしれませんねー。
吉田健一って生まれの良さのせいか?ガツガツしてないんですよね。でもお酒に関しては情熱を感じますw

★snoritaさん、こんにちは。
パンって、おいしいのがほとんど近所で手に入らないしろものですよね。友達の家で宴会するときも、パン買出し部隊が必要です。

★keisukeさん、こんにちは。
特に日本のパンは焼きも甘いですもんね。8枚切りくらいに薄いと、スポンジ感というかふわふわ感も抑制されるような気がします。
by chicory (2009-08-25 10:18) 

castanha

食べ物についての文章、あからさまでは品がなく~~のところ、同感です。
難しいもんですよね。
私は今、森茉莉の『貧乏サヴァラン』を読んでいて、同様のことを想ってました。
それより、この作者のアクの強さも相当なものですが(^^ゞ
by castanha (2009-08-28 21:02) 

chicory

「貧乏サヴァラン」、面白いですよね。
淡島通りの自宅から下北沢まで氷を買いに行くくだりは爆笑ものです(ちょっとo社のTさんみたいじゃないですか?)。
しかしこういう「思い入れの激しさ」みたいなのは作家には必要なんだろうなぁと思います(友達にはなれそうにないですけど)。
by chicory (2009-08-28 22:24) 

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